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労務情報

実務に役立つ!労働裁判例シリーズ ~ 問題社員の懲戒処分編 ~

公開日:2020年9月24日(当記事の内容は公開時点のものです)

監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 
監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 


実務に役立つ!労働裁判例シリーズ(問題社員の懲戒処分編)

今週のピックアップ

【労務情報】
◆ 懲戒処分を検討する際に、考慮すべき3つのポイントとは?
◆ 懲戒処分に関する裁判例(その1)
◆ 懲戒処分に関する裁判例(その2)
◆ 社内公表はプライバシーの侵害?
◆ 新型コロナ感染を隠して出社した社員は懲戒対象?
◆ 社内不倫は懲戒対象?


【KING OF TIME 情報】
◆ 新しいサポート体制について
◆ お電話でのサポートの予約について
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懲戒処分を検討する際に、考慮すべき3つのポイントとは?

長年、労務相談業務に携わっておりますと、問題社員の対処に関するご相談を受ける機会は決して少なくありません。
詳しくお話を伺うと、その社員はたしかにトラブルメーカーであり、企業の経営者様や担当者様がご立腹される気持ちはとても理解できます。

一方で、感情論だけで懲戒処分を決定してしまうことは非常にリスクです。
安易に懲戒処分を決定してしまうと、その処分は権利濫用として無効となることもあり、そうなると元も子もありません。

懲戒処分を検討する際には、
1.就業規則に懲戒事由の記載があり、社内に周知されているか?
2.問題行動が、懲戒事由に該当しているか?
3.懲戒処分が、社会通念上相当であるか?


この3つのポイントに沿って、冷静に判断することが重要になります。


懲戒処分に関する裁判例(その1)

懲戒処分を行うためには、そもそも就業規則に懲戒処分の種別、事由の記載があること。そして問題行動が懲戒事由に該当していることが前提となります。

加えて、その就業規則が会社のルールとしての効力を発揮するためには、社内に周知されていることが条件になります。

A社事件(最高裁 平成15年10月10日判決)
ある社員が、上司に対して反抗的な態度を取ったり、暴言を吐いたりし、また取引先からの依頼に応じずトラブルを発生させていた。

困り果てた会社は、職場の秩序を乱したとして、その問題社員を懲戒解雇処分としたが、その処分が不服として会社を提訴。

問題社員の勤務先には就業規則が備え付けられていなかった。つまり、就業規則が社内で周知されていなかったとの理由で、懲戒処分は無効であると判決を下された。

なお、就業規則の社内周知は、会社が社員に対して一言一句説明し、内容を理解してもらうことまでは求められておりません。

事業所の見やすい場所に掲示し、または備え付けたり、社内のデータベースに保存しておき、社員が確認したいと思ったときに、いつでも確認できる状態にしておけば問題ありません。


懲戒処分に関する裁判例(その2)

懲戒処分の内容が、社会通念上相当である必要があります。
社会通念上相当とは、「問題行動と懲戒処分のバランス」「他の懲戒処分事案とのバランス」「懲戒処分とするまでのプロセス」、この3つの視点で判断します。

B社事件(大阪地裁 平成10年5月13日判決)
部下の胸ぐらをつかんで怒鳴ったり、土下座して謝れなどの暴言を吐いた社員を懲戒解雇としたが、会社はそれまでに始末書の提出や、注意を与えていなかった。

懲戒処分を段階的に行うのではなく、いきなり懲戒解雇とすることは重すぎる処分であるとし、問題行動と懲戒処分のバランスを欠くとして無効であるとの判決が下された。

その他、問題社員が複数おり、一方は懲戒解雇とし、もう一方はけん責処分としたことが、他の懲戒処分事案とのバランスを欠くとして無効となった裁判。
また、就業規則に定める当事者の弁明を聴く手続きを取っていなかったため、懲戒処分とするまでのプロセスが不適格として無効となった裁判もあります。


社内公表はプライバシーの侵害?

懲戒処分の内容を社内公表することで、社内秩序を維持したり再発防止としての効果が期待できます。
一方で、当該社員の名誉やプライバシー保護の問題も併せて考慮する必要があります。

事実、懲戒解雇を行ったことを社内公表した会社が名誉棄損として訴えられ、違法であるとして損害賠償が認められた裁判例も存在します。

では、どの情報まで公表すればよいでしょうか。

氏名の公表については、違法と判断される可能性が高いです。
また、当該社員が所属する部署や役職についても、個人が特定出来るのであれば、違法と判断される可能性が高いです。

これらの情報は、公表することが一切認められていない訳ではありません。
しかし、懲戒処分の内容を社内公表することの目的を、社内秩序の維持や再発防止であると考えますと、個人が特定出来る情報は公表せず、処分対象となった問題行動と処分内容を公表すれば足りるとも考えられます。

よって社内公表するにしても、当該問題行動が悪質かつ重大な場合に限定する運用とした方がよろしいでしょう。


新型コロナ感染を隠して出社した社員は懲戒対象?

職場クラスターの発生を防ぐため、新型コロナウイルスに感染した場合、社内に報告するルールを設けている会社が多いと思います。

では、新型コロナウイルスに感染したにもかかわらず、その事実を隠して出社した社員がいた場合、その社員を懲戒処分とすることはできるでしょうか?

就業規則に、感染症に感染した場合に出社を禁止する規定があり、かつ懲戒事由に該当する場合は、懲戒処分とすることも可能ではあります。

一方で、その懲戒処分が社会通念上相当か?という点も検討する必要があります。

当該社員の悪質性や常習性、そして他の社員やお客様へ感染させたかなどの影響(当該社員から感染したのか、慎重な判断が必要)などを考慮して懲戒処分の内容を判断することになりますが、先ずは口頭注意から行った方がよろしいでしょう。


社内不倫は懲戒対象?

社員の労働契約上での義務は労務の提供であり、労働時間以外の私生活について会社が何かしらの規制を行うことはできません。よって、私生活上での非行は、懲戒処分の対象とならないのが原則の考え方になります。

不倫は法律上では不貞行為となり違法行為となりますが、あくまで私生活上の行為になります。よって、単に不倫をしていることだけをもって懲戒処分とすることは出来ません。

また、一般的な就業規則では服務規律として社員に対し職場秩序を維持することを義務付けておりますが、単に社内に微妙な空気が漂っている、他の社員が気を遣ってしまうなどの理由だけでは、懲戒処分とすることは難しいでしょう。

なお、社内秩序や業務遂行に重大な支障があったとして、懲戒処分が認められた裁判例もあります。

C社事件(東京高裁 昭41年7月30日判決)
バス会社に勤務する運転手(妻子あり)が、未成年の女性社員と不倫関係となり、女性社員を妊娠させ中絶手術後に女性社員が退職したことを理由に懲戒処分(解雇)とした。

裁判所は以下の理由により、懲戒処分は有効である判断。
・長距離バス路線では終点で男女社員を宿泊せざるを得ない特殊な職場環境であり、会社として風紀を維持するよう社内で指導していた。
・社内不倫をきっかけに女性社員が退職。妊娠・中絶も公となり、他の女性社員に不安や動揺を生じさせた。
・地元関係者にも不信感を与え、今後の女性社員の採用に悪影響を及ぼすと考えられた。
・会社の名誉や信用が損なわれた。

口頭注意や始末書提出などの軽い処分ではなく、解雇などの重い処分を検討する際には、専門家のアドバイスを受けた方がよろしいでしょう。



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本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
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監修元:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント

 
 
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