30日間無料体験
オンライン見積
資料ダウンロード

労務情報

実務に役立つ!労働裁判例シリーズ ~ 同一労働・同一賃金編 ~

公開日:2020年8月27日(当記事の内容は公開時点のものです)

監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 
監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 


長引く新型コロナ、社員の体調面に留意!~改めてストレスチェックについて解説します~

今週のピックアップ

【労務情報】
◆ 2021年4月から中小企業も適用開始
◆ 同一労働・同一賃金に関する最高裁判決
◆ 正社員と有期契約社員との労働条件の違いは?
◆ 無事故手当についての最高裁判断
◆ 作業手当についての最高裁判断
◆ 給食手当についての最高裁判断
◆ 皆勤手当についての最高裁判断
◆ 通勤手当についての最高裁判断
◆ 住宅手当についての最高裁判断
◆ A社事件から考える、実務上のポイント


【KING OF TIME 情報】
◆「エラー勤務」の原因と対処法
◆ 勤務予定がない日の打刻をエラーとして扱う
◆ エラー勤務のメール通知
☞ KING OF TIME 情報は 《 こちら 》


2021年4月から中小企業も適用開始

同一労働・同一賃金とは、無期雇用フルタイム労働者(いわゆる正社員)と、有期契約労働者やパートタイム労働者(いわゆる非正規社員)との間の、不合理な待遇差は認めないというものになります。

対象としている待遇については、基本給、昇給、ボーナス、各種手当といった賃金だけでなく、教育訓練や福利厚生などについても含まれております。つまり、労働条件全般で不合理な待遇差が認められないということになります。

なお、同一労働・同一賃金には「均等待遇」と「均衡待遇」という、2つの考え方が存在します。

均等待遇:仕事内容が同じであれば、同じ待遇にしなければならない。
均衡待遇:仕事内容が違うのであれば、その違いに応じた待遇差にしなければならない。

正社員と非正規社員との間で、仕事内容や仕事に伴う責任の程度、配置転換などの人材活用の仕組みなどに違いがあるのであれば、その違いに応じて合理的な待遇差を設けることは、問題ないということになります。


同一労働・同一賃金に関する最高裁判決

同一労働・同一賃金の対応については、厚生労働省からガイドラインが示されておりますが、社内での対応を検討する上で裁判例をチェックすることは非常に重要です。

A社事件(最高裁 2018年6月1日判決)
この裁判は、運送会社であるA社で、正社員と有期契約社員の待遇差が違法であるとして、配送ドライバーである有期契約社員が会社を訴えた裁判になります。

具体的には、正社員の配送ドライバーには、会社は無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当、家族手当を支払っていたものの、有期契約社員の配送ドライバーにはそれら手当は一切支払っていませんでした。また、有期契約社員には通勤手当を支払っていたものの、正社員と比較すると一部しか支払っておりませんでした。

同じ配送ドライバーという仕事内容であれば、この待遇差は不合理だ。ということで、正社員と同一の手当を支払え!と訴えを起こした裁判になります。


正社員と有期契約社員との労働条件の違いは?

A社での、正社員と有期契約社員の労働条件は、どのような内容だったでしょうか?

前述のとおり、正社員と有期契約社員の仕事内容は同じ「配送ドライバー」です。
一方で、A社では就業規則を正社員用と有期契約社員用とで分けて作成しており、配置転換などの人材活用の仕組みは、以下のとおり違いがありました。

<正社員>
・業務上必要がある場合は、会社は従業員の就業場所の変更を命ずることができる。
・出向を含む全国規模の広域異動の可能性もある。
・将来会社の中核を担う人材として育成するために、職務遂行能力に応じた人事制度がある。

<有期契約社員>
・配置転換又は出向に関する定めはない。
・就業場所の変更や出向も予定されていない。
・人事制度の適用もない。

このように、A社では正社員と有期契約社員との間で、異なる人事制度を適用しておりました。では、最高裁判所はどのような判決を下したでしょうか?


無事故手当についての最高裁判断

裁判では、まず「この手当はどのような目的で支払うのか?」について確認し、その上で「待遇差を設けることが問題ないか?」について、1つ1つの手当の判決を下しました。

無事故手当については、以下の理由により有期契約社員に支払わないことは違法であると判決を下しました。

<手当を支払う目的は?>
無事故手当は、優良ドライバーの育成や、安全な輸送による顧客の信頼獲得を目的として支給される手当である。

<待遇差を設けることは問題ないか?>
・正社員と有期契約社員の仕事内容は同じ配送ドライバーであり、安全運転や事故防止の必要性についても同じである。
・この必要性は、社員が将来転勤する可能性や、会社の中核を担う人材として登用される可能性の有無に関係ない。
・よって、有期契約社員に無事故手当を支払わないことは不合理であり、その待遇差は違法である。


作業手当についての最高裁判断

以下の理由により、有期契約社員に作業手当を支払わないことは違法であると判決を下しました。

<手当を支払う目的は?>
作業手当は、特定の作業を行った対価として支給されるものであり、作業そのものを金銭的に評価して支給される手当である。

<待遇差を設けることは問題ないか?>
正社員と有期契約社員の仕事内容は同じである。仮に仕事内容や人事制度が異なったとしても、行った作業に対する金銭的評価が異なるものではない。


給食手当についての最高裁判断

以下の理由により、有期契約社員に給食手当を支払わないことは違法であると判決を下しました。

<手当を支払う目的は?>
給食手当は、社員の食事に係る補助として支給されるものであり、勤務時間中に食事を取る必要がある社員に対して支給する手当である。

<待遇差を設けることは問題ないか?>
正社員と有期契約社員の仕事内容は同じである。また、人事制度が異なることは、勤務時間中に食事を取ることの必要性とは関係がない。


皆勤手当についての最高裁判断

以下の理由により、有期契約社員に皆勤手当を支払わないことは違法であると判決を下しました。

<手当を支払う目的は?>
皆勤手当は、会社が運送業務を円滑に進めるには、運転手を一定数確保する必要があるから、皆勤を奨励する目的で支給される手当である。

<待遇差を設けることは問題ないか?>
・正社員と有期契約社員の仕事内容は同じであるから、出勤者を確保する必要性について、両者の間に差異が生じない。
・また、出勤者を確保する必要性は将来の転勤または出向の可能性や、会社の中核を担う人材として登用される可能性の有無には関係ない。


通勤手当についての最高裁判断

以下の理由により、正社員と有期契約社員の間で通勤手当の上限額に差を設けることは、違法であると判決を下しました。

<手当を支払う目的は?>
通勤手当は、通勤に要する交通費を補填する目的で支給される手当である。

<待遇差を設けることは問題ないか?>
・労働契約の期間の定めの有無により、通勤に要する費用が異なるものではない。
・仕事内容や人事制度が異なっていたとしても、通勤に要する費用の多寡とは直接関連するものではない。


住宅手当についての最高裁判断

この裁判では、住宅手当については以下の理由により、差を設けることは違法ではないとの判決を下しました。

<手当を支払う目的は?>
住宅手当は、社員の住宅に要する費用を補助する目的で支給されている手当。

<待遇差を設けることは問題ないか?>
有期契約社員は就業場所の変更が予定されていないのに対し、正社員については転居を伴う配置転換が予定されているため、有期契約社員と比較して住宅に要する費用が多額となる可能性があるため問題ない。


A社事件から考える、実務上のポイント

このA社事件の最高裁判決から、同一労働・同一賃金を検討する上でどのようなポイントに気をつければいいでしょうか?

A社事件の判決内容でも記載しましたとおり、裁判所はまず1つ1つの手当の目的を確認した上で、その待遇差が不合理か否かを判断しております。
よって、自社で支払っている手当が、誰に対して、何を目的で支払っているか?ということを確認することをお勧めします。

特に福利厚生に関する手当をパート・アルバイト社員に対して一切支払っていない場合は、A社事件以外の裁判例でも会社が敗訴している裁判が多いので、注意が必要です。

また、職務分析を行い、正社員とパート・アルバイト社員の間での仕事内容や責任の度合いなどを区別することも重要です。

A社では、正社員も有期契約社員も同じ配送ドライバーで、仕事内容は同一でした。
有期契約社員全員が正社員と同じ仕事内容というケースに該当しなくとも、正社員並み(場合によって正社員以上)に働くベテランパート社員が何人かいる、という会社も多いのではないでしょうか?

これから初めて職務分析を行う場合、いきなり自社の全社員の分析を行わないことがポイントです。なぜなら、いきなり全社員に手を広げすぎると、作業が大変で挫折してしまう可能性が高いからです。

まずは自社の中で、正社員とパート・アルバイト社員の両方が所属している部署を対象とし、その中でも正社員並みに働くパート・アルバイト社員と、その方の仕事内容に近い正社員(入社2~3年目など)の比較、職務分析を行うことから始めてみるのがよいでしょう。



KING OF TIME 情報


エラー勤務に関するお問い合わせを頂いたので、機能やお役に立つヘルプコンテンツをご紹介いたします。

◆「エラー勤務」の原因と対処法
◆ 勤務予定がない日の打刻をエラーとして扱う
◆ エラー勤務のメール通知



「エラー勤務」の原因と対処法

本製品では打刻情報に不整合が発生した場合や、休暇の残数不足が発生すると、エラーを表示します。以下ヘルプコンテンツではエラー別の原因と対処方法をご案内しております。

「エラー勤務」の原因と対処法

☞ 「エラー勤務」に表示されるのは、どのような勤怠ですか?

 >>> 詳しくはこちら



勤務予定がない日の打刻をエラーとして扱う

スケジュールパターンまたはシフトの出退勤予定が無いにもかかわらず打刻データがある日を「対応が必要な処理」及び「エラー勤務」に表示できます。

エラー勤務設定

☞ 勤務予定がないのに打刻がある勤怠をエラーにできますか?

 >>> 詳しくはこちら



エラー勤務のメール通知

前日の勤怠にエラーが発生している場合、従業員や管理者にメール通知します。
参照するエラー勤務の対象期間を最長で「過去30日」、通知回数は最大「毎日3回」通知できます。

エラー勤務通知登録

☞ エラー勤務があった場合、メールで通知できますか?

 >>> 詳しくはこちら



本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
次回は、「 今年はどうなる?最低賃金 ~最低賃金は必ずチェック!そのチェックポイントなど~ 」についてお伝えする予定です。

今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。


監修元:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント

 
 
30日間無料体験バナー